かかりつけ医の条件

かかりつけの専門医についてお話させていただきましたが、
その続きについて、今回もつらつらとしゃべらせてもらいます。
まずかかりつけ医の条件として、重視したい点として、
「わかりやすい言葉で説明し、質問したときに答えをはぐらかしたりしない」
つまり曖昧ではないということがあります。医師の説明が難しかったり、
納得できなければ、患者は生理的に治療にかかわれないうえに
「こんなはずじゃなかった」とトラブルの原因にもなりがちです。

どんな病気でも診察してくれるお医者さんがかかりつけ医としてはありがたいですが、
日本では長年にわたり診療科ごとの専門的な医学教育に力を入れてきたので、
残念ながらどんな病気にも対応できる医師が少ないのが今の日本の切ないことです。

初診時にこれまでの病歴や家族歴などをくわしく聞いてくれる医師や、
データに頼りすぎず、患部をきちんと診てくれる医師も、患者の健康状態の把握に
努めようとする姿勢が伝わり、好感度が高いといえるでしょう。
また、勉強熱心で患者の言いなりにならず、だめなものはだめと言えることも大切。
優しさと厳しさを兼ね備えた医師が理想的です。

大手病院志向が強い日本では、大きな病院の医師をかかりつけ医としてたのみたいと
希望する人も多いです。がんや難病などを患い、専門医のいる病院での治療が
必要な人は、そうしたケースも想定されるでしょうが、
普通の風邪や腹痛などの軽い病気で医療機関を受診することが多い人は、
すぐに診察してくれるかかれて待ち時間の短い診療所のほうがおすすめです。

状況によっては再診料にも「再診時特定療養費」の自己負担が必要です。
これは、大病院での検査や治療を終えて、病院側から「今後は、診療所もしくは
200床未満の病院を紹介しますので、そちらで診療を受けてください」と申し出が
あったときに、患者が引き続き大病院での診療を希望した場合に発生します。

開業医も自分の得意とする専門科を持っており、たとえば、内科医といっても小児科や
産婦人科の勉強が不足している、子どもや女性の病気にはしっかりと
対応できないことがあります。

かかりつけ医を選ぶ前に

このような医療の現状を知ったうえで、私たちも家族構成に合わせて複数の
かかりつけ医を持つのがいいのではないかと思うでしょう。
子どものいる家庭であれば内科を基本に小児科、耳鼻咽喉科に加え、
母親の健康をサポートしてくれる産婦人科を選んでおきたいです。

若い女性の独り暮らしであれば、内科よりも産婦人科を基本にするのが
よいかもしれません。高齢者世帯の場合は、生活習慣病を抱えている人が多いため、
基本的には内科ですが、栄養や運動などの日常生活の指導に力を入れているところを
選びたいです。さらに、往診や在宅医療にも熱心であれば、
将来介護が必要になったときも安心です。

また、どの家庭にも歯科のかかりつけ医がいるとよいでしょう。
いずれにせよ、年齢や性別、持病によって基本となる診療科は人それぞれ違います。
まずは、自分がよく受診する診療科を中心にかかりつけ医を探すことをおすすめします。
かかりつけ医は、患者さんや家族の体調、生活習慣、病歴などを把握しています。
そのため、ちょっとした異変でも早期に発見し、病気の進行をくい止めることができます。
入院や検査、高度な治療が必要な場合、
適切な病院・診療科を指示、紹介してもらえることも大きなメリットです。
食事面等、日常の健康管理のアドバイスをしてもらえることもあります。
病気の経過がよくわかり診断・治療を迅速に進めることができます。
(無駄な検査の防止にも繋がります)

自律神経失調症とは

日本心身医学会では、自律神経失調症のことを
「検査をしても、その症状を裏づける結果がでず、
またちゃんとした変化がないのにさまざまな不具合を訴える状態」
定義づけています。なんでも自律神経失調症でかたづけてしまうと、
重大な病気をスルーすることにもなりかねません。不具合とされる症状が長く続く人や、
その周囲の人は、このことを十分に理解して今後を考える必要があります。

自律神経症状としては、倦怠感、全身のけだるさ、不眠(睡眠障害)、
食欲不振や味覚障害、
体重の極減、吐瀉感、下痢、胃の気持ち悪さ、頭重感、口の渇き、喉の違和感、めまい、
ふらつき、肩こり、背中・腰・関節の痛み、手脚の痺れ、冷感、動悸、胸部圧迫感、
呼吸困難感、便秘、下痢、頻尿、排尿障害、セックスレスなど、
言いだしたらきりがないくらいたくさんの症状があります。

これだけを見れば、私たちの誰もが疲労状態の時にある症状と変わりありません。
しかし「躁鬱の欝」の人は、私たちよりも症状を深刻に考えすぎたり、
苦しさ・辛さがその人の生活全般に障害を及ぼしていたり、
非現実的なほど症状にこだわったりするのです。

実は、クリニックを受診せずに他界してしまう人はたくさんいます。
しかし、自殺者の半数近くは、内科などの一般科を受診しています。
自殺者がなんらかのサインを発しているのにもかかわらず、
一般科で「自律神経失調症」と片付けられているケースがかなりあるのではないかと、
私は考えています。

なんで注意なの?

もしあなたやあなたの家族が統合失調症という診断を精神科・心療内科以外で受けたら、
それは要注意です。

理由は二つあって、一つは、そこに鬱病が隠されている可能性があるという点です。
原因不明の身体症状に対し、内科的な検査でなにも問題が認められないときには、
一般内科医は病気という診断を下しがちです。

もう一つは「自律神経失調症」という病名は実はガセネタなんです。
これは日本でしか通用ません。
内科などで「自律神経失調症」と診断される場合のほとんどが、
よくわからない病気を訴えていると見なされているのと同じです。
日本では「自律神経失調症」が確立した病名のように扱われ、
それについての洗脳文書が発売されていますが、
正確にいえば、それは、間違っているのです。嘘っぱちです。
厳密には「なんらかの疾患に伴う自律神経症状」と言い換えるべきです。

その一方、この謎の病気を訴える患者さんが非常に多いのはよく知られた事実で、
総合病院には大量の患者さんがいると考えられます。

私の研究では、総合病院のクリニックを受診する患者さんの六人に一人は
わけのわからない病気を訴えていました。
しかも、原因不明の身体症状を訴える患者さんの半分以上が、
下がり気味でした、気持ちが。
謎の病気を訴える患者さんは、精神医学では「身体表現性障害」と呼ばれています。
そして「身体表現性障害」と「うつ」の合併が非常に多く認められるのです。

「身体表現性障害」は、その患者さんの多さもわかりませんし
程度もわからず知られていません。
しかもその苦しみは強烈で、病状による苦しみと周囲に理解してもらえない苦しみを
併せ持っています。

今後、広く知れ渡るようになることを個人的には願っています。